さつまいものトリュフ

きっと誰もがひとつくらい、思い出のさつまいも料理やそれにまつわるエピソードがあるのではないだろうか。

私の場合は祖父母の家で食べたふかしいもがそのひとつだ。今ではずいぶん数が減っただろうが、昔の石油ストーブは今よりもずっと簡単な作りで、(本来は禁止されていたに違いないが)ストーブの上に鍋を置いておくと煮炊きすることができた。

秋冬に祖父母の家に行くとたいていアルミ箔にくるまれたさつまいもが2,3本並べられていた。じっくりと火を通したふかしいもはまろやかな甘みが一層引き立ち、他にはないしっとりとした口当たりだった。いくら食べても飽きることがなかった。家のストーブでは作れなかったから、このふかしいもは祖父母の家でしか味わえないお楽しみだった。

だが、さつまいものお菓子はあまり好きではなかった。そのままで十分甘く美味しいさつまいもに、わざわざ手を加えることが少しもったいなく感じたのだ。

そんな私にとって、WFPBのさつまいもをお菓子作りに「利用する」という考え方はサァッと視界が開けるようだった。さつまいもをひとつのフレーバーとして材料に加えるのではなく(もちろんそういうレシピもあるが)、さつまいも自体をお菓子の材料として利用するのである。卵やたっぷりのバター、砂糖の代わりにさつまいもを使うことで、マフィンやクッキー、ムース、さらにブラウニーまでもが作れてしまうのだ。

1年ほど前に「さつまいものショコラテリーヌ」というお菓子を作ったことがあるが、これもその考え方に影響を受けたレシピだ。作り方は至極簡単で、マッシュしたさつまいもと板チョコレートを混ぜ合わせ、長方形に形を整えて冷やし固める。だが、味はよかったものの、人によってはさつまいものもそっとした食感が気になるかもしれないと思い、正直にいってこのレシピにはいまひとつ自信が持てないところがあった。そのため当時ブログには載せたものの、クックパッドなど料理サイトに載せることまではせず、長らく放置したままになっていた。

ところが先日、とあるスーパーの月刊誌にさつまいものトリュフのレシピが掲載されていた。それはマッシュしたさつまいもと溶かした板チョコレートを混ぜ合わせて丸め、ココアパウダーをまぶして作るというもので、そう、あのレシピにとてもよく似ていたのである。

私ははっとした。そうか、テリーヌではなくトリュフにすればよかったのだ。目から鱗が落ちたようだった。と同時にとても嬉しくなった。なぜならこのレシピはおそらくプロの料理家さんが考えられたものであるからだ。自分の方向性は間違っていなかったのだとこのレシピに少し自信を持った。また、何かに行き詰まったとき、こんな風に視点を変えてみることは大切だと教えてもらった。

ちなみにレシピ:
・さつまいも・・・1本(皮をむき300ℊ)
・デーツペースト・・・50ℊ
・板チョコレート・・・1枚(40~50ℊ)(今回はカカオ70%の板チョコを1枚40ℊ使いました)
・ココアパウダー・・・大さじ1

作り方
1.さつまいもはゆでる・蒸すなどして加熱し柔らかくします。皮は加熱する前にむいても加熱した後にむいてもどちらでも。
2.ポリ袋の中に砕いた板チョコレートを入れ、皮をむいたさつまいも、デーツペースト、ココアパウダーを加えてよくもみます。さつまいもが熱いうちに!
3.全体がしっかり混ざり合ったら味見をし、OKなら形を整えます。粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やします

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